このページは、「えがおドラミ」独断と偏見のライブレポートのページです。
えがおドラミイメージ 愛と独断と偏見のライブレポート
LIVE REPORT
"Music From Deep Inside"

えがおドラミが主催したコンサート「アンモナイト」。
これは1999年1月22日・新宿JAMでの「アンモナイトVOL.2」のライブレポートです。
(最近物忘れが激しいので記憶違いのところはご勘弁。)ではいくぜ!

セットリスト
1:INSTRUMENTAL
2:OPEN YOUR BOOK
3:島味
4:派手な車
5:アンモナイト
6:PLASTIC MY DOLL(Vo:諸田コウ)
7:いかないで

INDEX
1:ライブ会場へ
2:メンバー登場!
3:ライブがはじまる
4:諸田節バクハツ!変なMC
5:癒しの声
6:役者がちがう
7:だいじょぶかーーーー
8:モノクロームの幻想
9:バカヤロー!バカヤロー!
10:そしてライブは終わる
11:おやすみ、諸田さん。


1:ライブ会場へ

今日は僕にとって初めて見るえがおドラミのライブである。
しかし、直前まで僕は行くか行くまいか迷っていた。

1月の初めに、いろいろお世話になった義理の母が亡くなってしまい、まだ心身共に落ちついていないときだったのだ。
葬儀関係は全て終わっていたが、心の中にはまだぽっかりと大きな穴があいていて、まだどこか夢を見ているような感じがしていた。

大好きな人だった。
病気が進んでしまってからも、決してあきらめず、泣き言もいわない、強い人だった。
僕たちは、なにもしてあげられなかった。

そんなうつろな状態のまま、とりあえず僕は友人と新宿のライブハウスJAMへ向かった。

途中に日清パワーステーションが見えてくる。
今はもうクローズしてしまっているが前はよくここにライブを見に来たっけ。

がらんとして人気のないパワステの入り口のドアを見ると、なんだか言いようのない寂しさにおそわれた。
変わらないものは何一つない。全てはうつろい消えていく。

そうこうしている内に、僕らはライブハウス・新宿JAMの入り口にたどり着いた。階段を下りていく。分厚いドアの向こうからこもった大音量がこぼれてくる。

ベース、ドラム。ギター。ボーカルのがなり声。タバコの煙と暗闇。久しぶりに触れるライブ小屋の雰囲気が少しだけ心を躍らせてくれた。

えがおドラミのメンバーが狭いステージにあがる。

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2:メンバー登場!

ステージ左手にはあごひげをヤギみたいに伸ばした諸田コウ。なんだか仙人みたいだ。肩からシルバーに光るフレットレスベース、「銀」を下げている。
そのおだやかな表情からは白塗りをしておどろおどろしい雰囲気だったDOOMの時と同一人物とは思えない。
頭にはヘッドフォンをしている。目は優しそうな笑みと狂気が程良くブレンドされている。いい顔だ。

センターには白いアイバニーズのギターを下げたMINAKO DORAMIが立つ。なかなかかわいくて魅力的。変なヘルメットを被ってキリストみたいな髭を生やしたやせっぽちのギタリスト、GO GO GOROが右手に立つ。

そして後ろには髪を後ろで束ねたドラムのJ.J.JACK.JOE。ドラムのセッティングをしながらスネアを2.3発叩く。乾いた抜けるような音が響く。

バックに流れていた音楽が、消え、ライトが落ちる。

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3:ライブが始まる

一瞬の静寂の後、突然諸田がマイクに向かってアカペラで歌い出す。
「え・え・え・えがおーーーーード・ド・ド・ドラミーーーーーーーーー」
ななななんじゃ、これ。

いきなり腰砕けになったところで諸田のベースが突然唸り出す。
1曲目「INSTRUMENTAL」
ハイポジションでのファンキーなベースリフ。すごい。音圧が違う。これが諸田コウの音か。

ギターが、そしてドラムが絡む。ベースとドラムの圧倒的なテクニック、センス、サウンド。他のバンドとは格が違う。それを思い知るのには一瞬で十分だった。

惜しむらくはあまりにベースとドラムが圧倒的なために、ボーカルとギターにほんの少しだけ物足りなさを覚えてしまうのはところ。

MINAKO DORAMIのボーカルは他で聴いたことのない様なユニークで魅力的なものだし、GOROはその飄々とした風貌がえがおドラミというバンドの雰囲気に妙にマッチしていて不思議な魅力を放っていたが、ギタープレイの不安定さがどうしても気に掛かってしまった。そのあやういバランスが魅力的なのだ、とする人もいるかもしれないが。

それでも曲が進むに従って、最初の印象よりもこの4人のコンビネーションがかなりイケてることに僕は気づき始めた。MINAKOのボーカルは静かに、しかし確実に熱をはらんでいき、GOROのパンキッシュなノイズギターと交わりながら不思議な空間を生み出していく。

なるほど。なんだかんだ言ってもやっぱり諸田と廣川が選んだメンバーだけある。

滑り込むようにして「INSTRUMENTAL」が終わる。
圧倒された客の拍手。

ここで諸田のMCが入る。

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4:諸田節バクハツ!変なMC

「ハロー。エブリボディ。グッドナイト。ARE YOU READ----Y?皆さーん、生きてますか!?」
このわけのわからんMC、やっぱり危ないひとだ。

「みんなー今日はアンパンマン、見たあ?(いきなりのボケた展開に会場ウケる)
今日は新宿ジャームおじさんでライブ、楽しいっすね・・・・」
(これが言いたかったのか・・・)

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5:癒しの声

2曲目「OPEN YOUR BOOK」

沖縄民謡(?)みたいなMINAKOのギターリフから始まる。
と、J.J.JACK.JOEのドラムがパタッととまる。
「ちがうちがう」どうやらMINAKOのリフが遅すぎたらしい。笑いながら再度イントロ。ペン・ペペン・ペン・ペペン。

しかし本当に不思議なボーカルだ。何となく昔うたった数え歌みたいなメロディ。どこか深いところが癒されるような声。

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6:役者がちがう

3曲目 「島味(しまあじ)」 DEMO98に収録。ディスコグラフィページへ

GO GO GOROの弾く不協和音ギリギリのかっこいいリフから始まる。JOEのドラムが、これ以上ない程の絶妙のタイミングでイントロにかぶってくる。気持ちいい。
MINAKOの歌の後ろでうねりまくる諸田のフレットレスベース。
MINAKOの不思議なヒンディ語の歌詞。

それにしてもこの曲でのJ.J.JACK.JOEのドラムはかっこいい。
途中のブレイクでのキメはもう、役者が1枚上だぜ、といった感じ。
ほんのコンマ0.1秒でもずれたら台無し、というところを絶妙のタイミングでキメる。そして極上のスネアの音。

DOOMのアルバムでその音の良さとテクニックは知っていたものの、ライブでこれだけの音を出すのには驚く。今回は何バンドも出ているのでドラムセットは共通なのに、なんでこんなに音が違うんだろう。素朴な疑問。

そして諸田のフレットレスによるユニークなサウンドとのコンビネーション。
なんて贅沢なバンドなんだろう。

しかし、この曲いいなあ。名曲だな。この曲はdemo98に入っているので機会があったらぜひ聴いてみて欲しい。

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7:だいじょぶかーーーー

ここでMINAKOのMC。
舌足らずのしゃべり方と照れながらのMCがかわいい。
客のMCに対する反応がいまいちなのを見て・・・

MINAKO 「聞こえマチタか?」(幼児語が妙に似合う・・・)
諸田 「返事が聞こえませんねえ。おーーーーーいだいじょぶかーーーーー?起きてるかーーーー」
MINAKO 「みんな寝てるよ?」
諸田「それじゃーーみんなかってにやってくれーーーーーい。
Next Song Called 、はーでーーーな車!」

4曲目「派手な車」DEMO98に収録。ディスコグラフィページへ

MINAKOのファンキーなカッティングから始まる、ヒンディ語の歌詞によるポップチューン。かわいい声だなあ。なにを歌ってるのか意味はわかんないけど。

サビで思いっきりメンバーがハモる。「ハーデナークルマー」

しかし聞くところによると実は本当の歌詞は「派手な車」と言っているわけではないらしい。
ヒンディ語の歌詞がたまたま「ハデナクルマ」と聞こえたところからタイトルが「派手な車」になってしまったとのこと。
実にばかばかしくていい話である。

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8:モノクロームの幻想

5曲目「アンモナイト」

諸田がステージ左奥のアンプに腰掛ける。
うつむき加減で、ベースを愛おしそうに抱え、視線をベースの指板に向ける。

ギターのアルペジオに続いて、諸田がスローなテンポでメロディアスなベースラインを弾き始める。フレットレスベースのなめらかにつながっていくフレーズ。

なんて美しい音を出すんだろう。どこか、魂の奥深いところからこぼれ落ちてくるような、やさしくて、強くて、脆いベースの音。
スポットライトに映し出されてプレイしている諸田の姿を見ていると、一瞬時が止まったような気がした。ふと、1枚のモノクローム・ポートレイトを見ているような錯覚を起こす。

ささやくようにやさしくMINAKOが歌い始める。
諸田のベースがメロディラインを紡いでいく。

サビでのJ.J.JACK.JOEの輝き出すようなシンバルの音。
バスドラとスネアが生命の鼓動を描き出す。きらめくようなGOROのギターがあたりを明るく包み込む。

そして、叫ぶような、祈るようなMINAKOのボーカルが高みまで登り詰めると、曲はまた静けさに戻っていく。
そして再び諸田のメロディアスなベースの音が重なっていく。

このライブの後、僕は何回かえがおドラミのライブに足を運んだ。
そして、そのたびに必ずこの曲のイントロで、何故だか涙が出そうになった。
アンプに腰掛けてイントロのベースを弾き始める諸田の横顔を見ていると、何故かわからないのだけれど、もうこの姿を見れないんじゃないかというような変な予感を覚えた。それくらい、諸田の奏でる音は、はかなくて、美しかった。

俺はなんであの時、涙が出そうになったのかな。諸田の死後、J.J.JACK.JOEとそんな話したことがある。その時、いつも冗談ばかり言っているJOEがいった。

「それはきっと、モロさんが命を削って出してた音だからだよ。」

そしてビールを20杯くらい飲んで少しだけ酔ったJOEは、照れくさそうに笑った。
「俺達、本気だったもの。」

ライブは続いている。

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9:バカヤロー!バカヤロー!

6曲目「PLASTIC MY DOLL」

「アンモナイト」が終わると、諸田はやおらベースをおろして、マイクを手にもつ。
え?と思うまもなく、J.J.JACK.JOEのドラムがロールし始め、MINAKOとGOROのギターがファンキーなカッティングを始める。

諸田のリードボーカルによる「PLASTIC MY DOLL」だ。
PLASTIC MY DOLL!!PLASTIC MY DOLL!!アンプの上に置いてある「ドラミちゃん」のぬいぐるみを抱きながらシャウトする諸田。

次第にエキサイティングして、頭頂部で伸ばした長い髪を振り乱す諸田。ざんばら髪が顔の前にかかる。(「あなごの話」参照)ふと、DOOM時代のNYで演奏しているときの写真を思い出す。ああ、やっぱり堅気の人じゃないんだなあ。そう実感する瞬間。

曲のラスト近く、諸田はマイクを口に含むようにしてシャウトする。
「バカヤロー!バカヤロー!」僕にはそう聞こえた。

曲が終わり一瞬放心状態でステージにすわりこむ諸田。再びベースを肩に掛ける。

短いMCのあと、すぐに曲に入ろうとするMINAKOをさえぎるようにして、J.J.JACK.JOEの「チューニングターーイム」というとぼけた声。

すかさずギターのチューニングをGOROに指示するJOE。
うーんさすが裏番じゃなくて影のバンマス。少しチューニングが気になっていたのでほっとすると同時に、J.J.JACK.JOEがいかにバンド全体を見てプレイしているかがわかり、面白い。いいバンドだなあ。実際。

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10:そしてライブは終わる

ラストの曲「いかないで」

MINAKOがギターをおろし、ハンドマイクで歌い始める。
サビで一気にはじけるMINAKOのボーカル。すごい声。
ちょっと変な踊り(ごめんね)がまた魅力的。
シャウト、シャウト。バンドが一気にクライマックスに登り詰める。
そしてエンディング。
諸田のフレットレスベースが無限ループのような音を奏で、この曲は終わる。

圧倒されたような客の拍手。かぶるようにしてBGMが鳴り始める。
ちょうど30分くらいのステージだった。もっと聞きたかったな、という感じ。

友人が興奮した口調で話しかけてくる。「すごいですね、なんですかこのバンドは」
僕も興奮して応える。「すげえだろ。」

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11:おやすみ、諸田さん。

帰り道、まだ興奮が続いている。胸の真ん中、奥深いあたりが、じんとしびれている。
花園神社の近くを歩きながら、心の中を占めていた大きな悲しみを忘れていることに僕は気が付いた。

悲しみはまたすぐに戻ってくるだろう。でも、今だけは悲しみは消えている。
そのかわりに「魂から湧き出たような音楽」が、すっぽりと僕のくたびれた心に収まっていた。

諸田さん、あの夜、確かに届いたんだ。
あなたたちの音は、僕の胸のとっても深いところに。

あなたはもういなくなっちゃったけど、僕は時々、胸の奥からあのときの音を取り出して、思い出している。
ガキのころからずっと音楽を聴いてきたけど、あの夜はじめてわかったよ。
音楽はとても強くて大きいものだって。

それじゃあ、ゆっくり、おやすみ。
Y

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